タンパク質は多ければ多いほど良いのでしょうか。国の基準が示す年齢別の摂取量の目安、とりすぎと死亡率の関係を調べた研究、腎臓への影響、高齢になってからの不足の問題を、中年と高齢で考え方が違うという視点からわかりやすく解説します。
最終更新:2026年10月26日
この記事でわかること
- 1日にとるタンパク質の目安は、年齢でどう変わるのか
- タンパク質のとりすぎと病気・死亡の関係について、研究でわかっていること
- とりすぎは腎臓に悪いのか、どんな人が注意すべきなのか
- 高齢になると、なぜ「とらなすぎ」のほうが問題になりやすいのか
タンパク質は、多くとるほど体に良いのか
タンパク質は、筋肉や皮膚、髪、血液、酵素などのもとになる大切な栄養素です。最近は「タンパク質をしっかりとろう」という情報をよく見かけます。そのため、多くとればとるほど体に良いと考えている人も多いかもしれません。
ところが、老化と寿命の研究からは、少し違う姿が見えてきています。タンパク質は、足りなければ体を弱らせます。一方で、中年のころにとりすぎることが、病気や死亡の多さと結びついていたという研究もあります。そして、その関係は年齢によって逆になることがあります。
この記事の結論を先にお伝えすると、次の2つです。
- タンパク質は、とりすぎもとらなすぎも良くないと考えられています。
- 中年と高齢とでは、気をつけるポイントが違います。
1日にどれくらいとればいいのか ― 年齢別の目安
日本では、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」で、栄養素ごとの目安を決めています。2025年版のタンパク質の基準は、次のとおりです。
| 年齢 | 推奨量(男性) | 推奨量(女性) | 目標量(エネルギーに占める割合) |
|---|---|---|---|
| 18〜49歳 | 65g/日 | 50g/日 | 13〜20% |
| 50〜64歳 | 65g/日 | 50g/日 | 14〜20% |
| 65〜74歳 | 60g/日 | 50g/日 | 15〜20% |
| 75歳以上 | 60g/日 | 50g/日 | 15〜20% |
「推奨量」は、ほとんどの人が不足しないための量です。「目標量」は、生活習慣病の予防などを考えて、食事全体のエネルギー(カロリー)のうち何%をタンパク質からとるのが望ましいかを示したものです。
ここで注目したいのは、2つの点です。
1つ目は、目標量の上限が、どの年齢でも20%になっていることです。基準では、とりすぎによる体への影響について十分な根拠はまだないとしながらも、代謝への影響や、高齢者の健康への影響の可能性を考えて、上限を20%としています。
2つ目は、下限が年齢とともに上がることです。50〜64歳は14%、65歳以上は15%です。高齢になると、タンパク質が不足しないことがより大切になるためです。
たとえば、1日に2,000kcalを食べる人なら、エネルギーの15%は300kcalです。タンパク質は1gあたり約4kcalなので、約75gになります。13〜20%なら、約65〜100gの範囲です。
とりすぎると病気が増えるのか ― アメリカで約18年追いかけた研究
タンパク質と寿命の関係を調べた研究で、よく知られているものがあります。アメリカの南カリフォルニア大学などの研究グループが2014年に発表した研究です[1]。
この研究では、アメリカの全国健康栄養調査に参加した50歳以上の6,381人について、食事の内容を調べ、その後約18年間の死亡を追いかけました。参加者は、1日のエネルギーのうちタンパク質が占める割合で、3つのグループに分けられました。
- 低タンパク質グループ:10%未満
- 中タンパク質グループ:10〜19%
- 高タンパク質グループ:20%以上
結果は、年齢によって大きく違いました。
50〜65歳では、高タンパク質グループは低タンパク質グループに比べて、全体の死亡の危険が約1.7倍(論文の要約では「75%増」)、がんで亡くなる危険が約4.3倍でした。中タンパク質グループでも、がんで亡くなる危険は約3倍でした。
66歳以上では、逆の結果でした。高タンパク質グループは低タンパク質グループに比べて、全体の死亡の危険が約3割低く、がんで亡くなる危険も約6割低かったのです。
また、糖尿病で亡くなる危険は、どの年齢でもタンパク質を多くとっていた人のほうが高い傾向でした。ただし、糖尿病で亡くなった人の数はとても少なく、数字は大きくぶれています。この部分は、とくに慎重に見る必要があります。
さらに、タンパク質が肉や乳製品などの動物性か、豆などの植物性かによっても違いがありました。論文の要約では、植物性のタンパク質の場合は、こうした関連がなくなるか弱まったと報告されています。
研究グループは、成長や細胞の増殖に関わる「IGF-1」というホルモンに注目しています。タンパク質を多くとるとIGF-1が増え、それががんの増え方に関わっているのではないか、という考え方です。
動物の実験では、何がわかっているのか
マウスを使った研究でも、タンパク質と寿命の関係が調べられています。
オーストラリアのシドニー大学の研究グループは、タンパク質・炭水化物・脂質の割合を変えた25種類の餌を用意し、858匹のマウスに好きなだけ食べさせました[2]。その結果、タンパク質が少なく炭水化物が多い餌のマウスで、寿命が最も長く、代謝の状態も良好でした。タンパク質が多く炭水化物が少ない餌では、食べる量が減ってカロリーが少なくなっても、寿命は延びませんでした。
また、アメリカのワシントン大学の研究グループは、タンパク質の多い餌を与えたマウスで、動脈硬化が進みやすくなることを報告しています[3]。タンパク質を食べると血液中のアミノ酸が増え、血管の壁にいる免疫細胞(マクロファージ)の中で「mTOR(エムトール)」というスイッチが入りすぎることが関わっていると考えられています。
ただし、これらはマウスの結果です。マウスで起きたことが、そのままヒトで起きるとは限りません。
中年と高齢では、なぜ考え方が違うのか
先ほどのアメリカの研究では、50〜65歳と66歳以上で、結果が逆になりました。これは、年齢によって体が必要とするものが変わるためだと考えられています。
中年のころは、まだ筋肉や体重が保たれている人が多い時期です。この時期にタンパク質を多くとり続けると、先ほどのIGF-1やmTORのような「成長のスイッチ」が入りすぎることが、がんなどの病気と関わる可能性が指摘されています。
一方、高齢になると、食べる量そのものが減りやすくなります。筋肉も年齢とともに減っていきます。筋肉の量や力が落ちる状態を「サルコペニア」、心と体の力が弱って介護が必要な状態に近づくことを「フレイル」と呼びます。高齢者にとっては、タンパク質のとりすぎより、不足のほうが問題になりやすいのです。
実際に、アメリカで70〜79歳の2,066人を3年間追いかけた研究では、タンパク質を最も多くとっていたグループは、最も少なかったグループに比べて、筋肉などの「脂肪を除いた体の重さ」の減り方が約40%少なかったと報告されています[4]。これも観察研究なので、タンパク質だけが原因だとはいえません。それでも、高齢になってからの不足に注意が必要なことを示す結果の一つです。
食事摂取基準でも、65歳以上の下限を15%に引き上げています。ただし、フレイルを防ぐための量をはっきり決めることは、まだ難しいとしています[5]。
とりすぎると腎臓に悪いのか
「タンパク質のとりすぎは腎臓に負担をかける」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、腎臓の状態によって答えが変わります。
腎臓に病気のない健康な人では、はっきりした悪影響は確認されていません。健康な大人を対象にした28本の研究(合わせて1,358人)をまとめた分析では、タンパク質を多くとっても、腎臓の働きの変化に差は見られませんでした[6]。食事摂取基準でも、とりすぎの上限量(耐容上限量)は、腎臓への影響を考える必要があるとしながら、根拠が十分でないため設定されていません[5]。
すでに腎臓の病気(慢性腎臓病)がある人では、話が違います。診療ガイドラインでは、病気の進み具合に応じて、タンパク質の量を制限することが勧められています[5]。腎臓病のある人がタンパク質を自己判断で増やすことは避け、必ず医師や管理栄養士に相談してください。
なお、「タンパク質をとりすぎると、こんな症状が出る」という、はっきり決まったサインはありません。とりすぎは自覚しにくいからこそ、量の目安を知っておくことが大切です。
体の中で作られるタンパク質と、食事のタンパク質は別の話
老化の研究では、「タンパク質を減らすと若返る」という話を耳にすることがあります。ここは、混同しないように注意が必要です。
横浜市立大学の研究チームは、約40年にわたり細胞の老化と若返りを研究してきました。その中で、培養した細胞の中で作られるタンパク質の量をわずかに抑えると、細胞が老化しにくくなることを報告しています(2016年)[7]。これは、細胞が自分の中で作るタンパク質の話です。
一方、この記事で紹介してきたのは、食事からとるタンパク質の量の話です。食事のタンパク質を減らしても、細胞の中で作られるタンパク質が同じように減るわけではありません。細胞の研究については、企業サイトの研究コラム「若返りは可能か?」で紹介しています。
タンパク質の研究を読むときに気をつけたいこと
タンパク質の情報は、ニュースやSNSでもよく話題になります。研究の結果を見るときは、次の点を確かめるのがおすすめです。
- 観察研究か、試験か:食事の内容と、その後の病気を比べた研究(観察研究)は、「関係がある」ことは示せても、「タンパク質が原因だった」とまでは言えません。タンパク質を多くとる人は、ほかの食習慣や生活習慣も違っている可能性があります。
- 食事の調べ方:アメリカの研究では、食事の内容を1日分の聞き取りで調べていました。また、低タンパク質グループは437人と少人数でした。数字の大きさは、ある程度幅をもって受け止める必要があります。
- 動物かヒトか:マウスの結果は、ヒトで確かめるまでは「可能性」の段階です。
- 年齢と体の状態:同じ研究の中でも、年齢によって結果が逆になることがあります。自分の年齢や持病にあてはまるかを考えることが大切です。
よくある質問
Q. タンパク質は、多めにとっておいたほうが安心ですか?
A. 研究からは、「多いほど良い」とはいえません。中年のころにタンパク質の割合が高い食事を続けていた人で、がんなどによる死亡が多かったという観察研究があります。まずは国の基準の範囲(エネルギーの13〜20%前後)を目安に、ふだんの食事でとることを考えるのがよいでしょう。
Q. 高齢になったら、タンパク質は減らしたほうがいいですか?
A. いいえ。高齢になると、とりすぎよりも不足のほうが問題になりやすいと考えられています。アメリカの研究でも、66歳以上ではタンパク質を多くとっていた人のほうが死亡の危険は低い結果でした。食事摂取基準でも、65歳以上は下限が15%に引き上げられています。食が細くなったときは、とくに不足に気をつけてください。
Q. 動物性と植物性、どちらのタンパク質がいいですか?
A. 植物性のタンパク質のほうが好ましい結果を示した研究があります。日本人約7万人を追いかけた研究でも、植物性のタンパク質を多くとっていた人のほうが、全体の死亡の危険が低い傾向でした[8]。ただし、これも観察研究です。どちらか一方に偏らず、豆類、魚、卵、肉、乳製品など、いろいろな食品からとることが基本です。
Q. 自分のタンパク質の量が多いか少ないか、どう判断すればいいですか?
A. 体格や活動量、年齢、持病によって、必要な量は人それぞれです。食事を大きく変える前に、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。とくに腎臓病や糖尿病などの持病のある人は、自己判断で量を変えないでください。
まとめ
- タンパク質は体に欠かせない栄養素だが、多くとるほど良いわけではない。国の基準では、エネルギーの13〜20%(50〜64歳は14〜20%、65歳以上は15〜20%)が目標とされている。
- アメリカの観察研究では、50〜65歳でタンパク質を多くとっていた人は、全体の死亡の危険が約1.7倍、がんで亡くなる危険が約4.3倍だった。一方、66歳以上では、多くとっていた人のほうが死亡の危険が低かった。
- 健康な人では、タンパク質を多くとっても腎臓への悪影響ははっきり確認されていない。ただし、腎臓病のある人は医師の指示に従う必要がある。
- 中年はとりすぎに、高齢は不足に気をつける。とりすぎもとらなすぎも良くない、というのが現在の研究から見えてくる考え方である。
タンパク質の研究は、観察研究や動物実験が中心で、まだわかっていないことも多くあります。食事を自己判断で大きく変えず、気になることがあれば医師や管理栄養士に相談してください。
関連ページ
- 企業サイト 研究コラム「若返りは可能か?」
引用・参考文献
- Levine ME, et al. Low protein intake is associated with a major reduction in IGF-1, cancer, and overall mortality in the 65 and younger but not older population. Cell Metabolism. 2014;19(3):407-417.
- Solon-Biet SM, et al. The ratio of macronutrients, not caloric intake, dictates cardiometabolic health, aging, and longevity in ad libitum-fed mice. Cell Metabolism. 2014;19(3):418-430.
- Zhang X, et al. High-protein diets increase cardiovascular risk by activating macrophage mTOR to suppress mitophagy. Nature Metabolism. 2020;2(1):110-125.
- Houston DK, et al. Dietary protein intake is associated with lean mass change in older, community-dwelling adults: the Health, Aging, and Body Composition (Health ABC) Study. American Journal of Clinical Nutrition. 2008;87(1):150-155.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(および「策定のポイント」2025年2月)
- Devries MC, et al. Changes in kidney function do not differ between healthy adults consuming higher- compared with lower- or normal-protein diets: a systematic review and meta-analysis. Journal of Nutrition. 2018;148(11):1760-1775.
- Takauji Y, et al. Restriction of protein synthesis abolishes senescence features at cellular and organismal levels. Scientific Reports. 2016.
- Budhathoki S, et al. Association of animal and plant protein intake with all-cause and cause-specific mortality in a Japanese cohort. JAMA Internal Medicine. 2019;179(11):1509-1518.
※本記事は老化研究に関する一般的な科学情報を紹介するものであり、特定の疾病の診断・治療・予防や、特定の製品の効果を示すものではありません。動物・細胞レベルの研究を含みます。