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ドーシャのバランスを整えるには?アーユルヴェーダの体質改善法をハーブ・食事・行動から解説

ドーシャのバランスを整えるには?アーユルヴェーダの体質改善法をハーブ・食事・行動から解説

体質改善法はあちこちで目にしますが、体質を整える手段そのものは4つしかありません。ハーブ、食事、行動、そして浄化です。それぞれがなぜ効くのかを、細胞のなかで起きていることから読み解きます。あわせて、体質の違いがもっとも表に出る場所—毛髪について、薄毛が生まれる仕組みまで詳しく取り上げます。

「では、具体的に何をすればよいのでしょうか」—体質(プラクリティ)の回は、この問いを立てたところで終わりました。

体質改善法は、たしかにあちこちで目にします。取るとよいもの、控えたほうがよいもの、向いている過ごし方。数え上げればきりがありません。けれども、手段そのものに目を移すと、話はずいぶん単純になります。アーユルヴェーダが体質を整えるために用意している方法は、大きく4つしかないからです。

この記事では、その4つを一つずつ、「なぜそれが効くのか」という科学の側から見ていきます。あわせて、体質の違いがもっともはっきり表に出る場所—毛髪について、詳しく取り上げます。

1. 体質は、どこまで変えられるのか

この連載では、アーユルヴェーダの土台にあるサーンキャ哲学と、トリドーシャ理論を扱ってきました。まずは体質の回のおさらいから始めます。アーユルヴェーダは体質を2つの言葉で捉えていました。生まれたときの、その人本来の体質がプラクリティ。そこからさまざまな要因によって変化した、いまの状態がヴィクリティです。

そして、体質を決める要因には先天的なものと後天的なものがありました。

  • 先天的要因—両親から受け継いだ遺伝子、受精卵の胚葉形成、胎児の初期発生におけるHOX遺伝子の発現
  • 後天的要因—生理活性物質(食事・ハーブ類)、自然環境(気候風土)、生活習慣(日々の行動様式)

ここで押さえておきたいのは、この2つが切り離されたものではないという点です。先天的な要因そのものは変えられませんが、後天的な要因の側から働きかけることで、先天的に決まった部分の現れ方も、かなり修正できると考えられています。すべてが生まれた時点で確定しているわけではない、ということです。

アーユルヴェーダが体質改善に膨大な労力を注いできたのは、まさにここに理由があります。うまくやれば体質は改善する—その前提があるからこそ、細かな指針が積み上がってきました。

もう一つ、前提として知っておきたいことがあります。生まれたときの体質は、そもそもバランスが取れていないのが一般的です。どれかのドーシャが強く出ているのが普通で、そのまま放っておけば偏りは強まり、体質病—その体質が崩れたときに出やすい不調—につながりやすくなる。だからこそ日々の改善が重要である、というのがアーユルヴェーダの立場です。

2. 体質を整える手段は、4つしかない

体質や行動の違いは、突きつめれば生理機能の多様性から生まれています。だとすれば、体質を整えるということは、体の中で起きている反応に外から手を加える、ということになります。その手段は4つです。

体質を整える手段は、4つしかない
手段 何をするのか どうやって働くのか
ハーブ 特定の生理作用をもつ植物成分を取り入れる 体内のタンパク質(酵素・受容体など)の働きに直接作用する
食事 日々の食べ物の種類と摂取量を体質に合わせる 栄養成分がもつ生理作用を利用する
行動 生活習慣や振る舞いを意識して変える ホルモン・神経伝達物質・感覚受容体の働きを自分で制御する
浄化 パンチャカルマなどの伝統的な浄化法を行う 体内に溜まったものを排出する

このうちハーブは、アーユルヴェーダの中心にあり続けてきた手段です。任意の生理作用に狙いを定めやすく、体質を整えるうえでもっとも簡便な方法とされています。

食事もハーブも、原理は同じです。医食同源という言葉のとおり、食物の栄養成分もそれぞれ生理作用をもっています。ハーブ製剤と成分が重なることも珍しくありません。違いは作用の強さと、狙いの定めやすさです。

行動は、ホルモンや神経伝達物質、感覚受容体の働きを、意志の力で変更させようとする方法です。完全には無理でも、ある程度までは制御できます。

浄化法については、パンチャカルマやスネハナカルマといった技法が伝わっています。ただし日本では医療行為の扱いになることが多く、受けられる場所は限られます。この記事では名前を挙げるにとどめます。

つまり実際に日々の暮らしのなかで動かせるのは、ハーブ、食事、行動の3つということになります。以下、順に見ていきます。

3. 食事—「温かい・冷たい」は科学で説明できる

アーユルヴェーダの食事法には、必ず「温かい食べ物」「冷たい食べ物」という言い方が出てきます。ただしこれは、口に入れたときの温度の話ではありません。

食物の生理作用は、すべて科学的に説明できます。

  • 温かい食物とは、体内で発熱反応を誘発し、熱を閉じ込める方向に働くもの
  • 冷たい食物とは、吸熱反応を誘発し、熱を発散させる方向に働くもの

温度そのものではなく、体の中で起きる反応の向きを指しています。そう捉え直すと、体質によって勧められる食べ物が違う理由も、筋道として見えてきます。

食事—「温かい・冷たい」は科学で説明できる

アーユルヴェーダの古典は、食材ごとの規定を驚くほど細かく定めています。ただ、それをそのまま実行に移すのは現実的ではありません。ここでは、大づかみな目安だけを挙げます。

体質 摂取量 避けたい食物 好ましい食物
ヴァータ やや多め 冷たいもの、軽いもの(干物、冷奴) 体を温めるもの(濃く温かいスープ)
ピッタ 普通 辛いもの、熱いもの(漬物、香辛料) 代謝を抑えるもの(甘い物)
カパ 少なめ 甘いもの、重いもの(菓子、唐揚げ) 代謝を高めるもの(香辛料)

ここで一つ、誤解しやすい点に触れておきます。ピッタの欄に「甘い物」とありますが、これは甘い物ばかり食べてよいという意味ではありません。前提にあるのは、あくまでバランスのとれた食事です。そのうえで、少し多めに取るか、少なめにするか—調整の方向を示しているにすぎません。

細かな規定をすべて守ろうとすると、絵に描いた餅になります。基本の原理をつかんだうえで、自分にできるところから少しずつ動かしていく。そのほうが結局は長く続きます。

4. 行動—自分の意志で動かせる領域

4つの手段のうち、いちばん自由が利くのが行動です。

私たちの振る舞いは、ホルモンや神経伝達物質、感覚受容体の働きに支えられています。そして、その働き方には体質ごとの偏りが出ます。多弁で動きが多い、批判的になりやすい、動き出しに時間がかかる—どれも「性格」として片づけられがちですが、その下には生理的な傾向があります。

ただし行動は、意志の力である程度まで抗えます。完璧でなくとも、方向を変えることはできます。遺伝子の働きや胚葉形成のように手の届かない領域とは、そこが違います。

体質 変えるとよい振る舞い 得られるもの
ヴァータ 多弁、多動 → 無口、落ち着き 行動が安定する
ピッタ 批判、攻撃 → 博愛、思いやり 人間関係が円滑になる
カパ 怠惰、強欲 → 禁欲、理性重視 自己改革につながる

行動を変えたときに、いちばんはっきり表れるのは、人との関わり方です。自分の傾向を知り、それと反対の方向へ少し寄せてみる。それだけで、日々の摩擦は目に見えて減ります。続けていけば、ものの受け取り方そのものも少しずつ変わっていきます。体質の偏りをならしていくのは時間のかかる話ですが、こちらは今日から始められます。

なお、こうした言葉の当てはめ方には幅があります。「多弁」「批判的」「怠惰」といった表現も、あくまで比較のために置かれたものです。自分自身でしっくりくる言い方に置き換えて読んでいただくのがよいと思います。

5. ハーブ—植物の成分は、なぜ体に届くのか

4つの手段のうち、なぜそれが効くのかを分子のレベルまで追求できるのが、ハーブです。ここからしばらく、その中身を見ていきます。

アーユルヴェーダにおいて、ハーブは大きな位置を占めてきました。何千年も臨床で使われ、経験的に多くのことが分かっています。そして近年のアーユルヴェーダ研究の大きな流れは、その経験を現代科学の手法で検証することに向かっています。

まず、伝統的にどのハーブがどの体質に用いられてきたかを整理します。

※以下はアーユルヴェーダの伝統的な考え方の紹介であり、特定の効果を示すものではありません。

体質 伝統的に用いられてきたハーブ 期待されてきた働きの方向
ヴァータ アマラキ、アシュワガンダ、シャタバリ など 体を強くし、状態を一定に保つ方向
ピッタ 甘草、コリアンダー、フェンネル など 高まりすぎた働きを抑える方向
カパ ターメリック、ショウガ、クミン、黒コショウ など 滞った状態をほぐし、働きを高める方向

考え方はいたって単純で、弱いところは補い、強く出すぎているところは抑える—体質と反対の方向に働くものを選ぶ、ということです。

なお、アーユルヴェーダには「ラサーヤナ」と呼ばれる分野があります。不老長寿を扱う学問と、不老長寿薬そのものを意味します。アーユルヴェーダという医療体系が最後に目指すところでもあります。そこで用いられてきた、有効とされるハーブを多数組み合わせた製剤を「ラサーヤナ製剤」と呼びます。

有効成分のかたち—「体の基本成分+活性基」

長寿ハーブに含まれる有効成分は、ポリフェノール、テルペノイド、アルカロイドといった種類に分けられます。

そして研究が進むなかで、長寿ハーブの有効成分には共通する特徴があることが見えてきました。体にもともとある基本的な成分に、活性基と呼ばれる部分がくっついている、という構造です。

  • アムラ(アマラキ)に含まれるガロタンニン—グルコースに没食子酸が結合したもの。ポリフェノールの一種です
  • アシュワガンダに含まれるウィタフェリンA—ステロイド骨格にδラクトンが結合したもの

グルコースもステロイドも、私たちの体にもともとある基本成分です。そこに活性基が付くことで、その基本成分が関わる反応を抑えたり、促したりできるようになる。植物の成分が体に「効く」のは、この構造によるところが大きいのではないか—長寿ハーブの有効成分を並べていくと、そう思わせる共通点が見えてくる、ということです。

ハーブ—植物の成分は、なぜ体に届くのか

6. 細胞のなかで起きていること

有効成分は低分子の化合物です。細胞の中に入ると、想像しにくいほどの速さで動き回っています。

  • 秒速250メートルほどの速さで移動する
  • 1秒間に10の13乗回という回数の衝突を繰り返す

衝突しているというのは、言いかえれば相手を探しているということです。そして相手が見つかると、疎水結合、イオン結合、水素結合、共有結合という4種類の結び方で、弱くつかまえたり、強く固定したりします。

細胞のなかで起きていること

止まっているように見える細胞の中では、実際にはこれだけのことが起きています。

では、何を相手にしているのか。主にタンパク質です。

  • 酵素—活性中心に入り込んで働きを抑えたり、逆に促したりします。別の場所に結合して調節することもあります
  • 受容体—刺激受容体や感覚受容体。外からの刺激をどう受け取るかを左右します
  • 構造タンパク質—体のかたちをつくる部分です

さらに、生体や組織にたまった余分なものを片づける—浄化・解毒の働きも担っています。アーユルヴェーダが古くから重視してきた「浄化」は、細胞のレベルでもこうしたかたちで機能しているわけです。

7. 「熱い・冷たい」の感じ方は、人によって違う

ここで、体質の話に戻ります。

いま挙げたタンパク質のうち、体質ともっとも深く関わるのが受容体です。受容体は、外からの刺激や体内の変化を受け取る入口にあたります。そして、その性能には人によってかなりの幅があります。

分かりやすいのが温度です。熱い、冷たいという感覚は、感覚受容体が受け取っています。この受容体の働き方が違えば、同じ温度に触れても感じ方は変わる。人によっては、熱いと冷たいの受け取り方が逆になることさえあると考えられています。

「熱い・冷たい」の感じ方は、人によって違う

体質の回で、「同じものを同じだけ食べても、太りやすい人とそうでない人がいる」という話をしました。理由は同じところにあります。センサーも受容体も一種類ではなく、どれがどれくらい働くかに個人差がある。その積み重ねが、外から見える体質のちがいとして現れます。

アーユルヴェーダが「体質」と呼んできたものは、こうした分子レベルの個人差の集まりとして捉え直せる—そして、ハーブや食物の成分は、まさにそこに働きかけています。体質を説明する理論と、体質を整える方法は、同じ一本の筋でつながっているわけです。

8. 「自然のものだから安全」は誤解

ハーブの話をするうえで、避けて通れない点があります。

植物由来だから、食べ物由来だから安全—そう受け取られがちですが、これは正確ではありません。ハーブの有効成分の多くは、もともと植物が天敵から身を守るためにつくった化学兵器であり、毒性物質です。動物でいえば、ヘビやハチが毒を用いて防衛したり、獲物を捕らえたりするのと同じことを、植物は化学物質で行っています。

そして毒の多くは神経や細胞膜に働くなど、相手の弱いところを狙うようにできています。裏を返せば、ごく微量であれば、その狙いの正確さがそのまま効きめになります。

つまり、毒と薬を分けているのは、物質の出自ではなく量です。「毒も薬もさじ加減」という言い方は、東洋医学の常識でもあります。

アーユルヴェーダには、製剤の作り方についての決まりが古くから定められています。副作用が出ないようにしたり、新しい作用を生みだしたり、患部へ安定的に届けたりする工夫をしてきました。逆にいえば、そうした手当てをしなければ副作用は出るということです。長い時間をかけて積み上げられてきた決まりごとは、東洋医学の叡智の結晶だともいわれています。

もう一つ、よく問われることがあります。アーユルヴェーダのハーブ製剤と、西洋医学の薬はどこが違うのか。答えは「基本的には同じ。使い方が違うだけ」です。同じ人間に使う物質なのだから、そもそも境界はありません。現代医学の医薬品も、もとをたどればハーブに行き着くものが数多くあります。

違いは、西洋の薬物が単一の成分にまで精製されている点です。精製されているぶん作用ははっきりしていて、狙ったところへすばやく届きます。病気を治す場面では、その切れ味が必要になります。

いっぽうで、健康長寿や予防医学が相手にするのは、体と心の全体です。病気でないことはもちろん、全身の機能を保つこと、老化を遅らせること、細胞を活性に保つこと。病気ひとつとっても、その種類は数えきれません。薬が作用する標的が、それだけ多数あるということです。副作用を抑えながら多くの生理反応を制御しようとすれば、有効物質を多数組み合わせる必要があります。単一成分まで精製した薬物を使う意味が、ここではありません。

どちらが優れているという話ではなく、目的と使い方が違うのです。

9. 体質がいちばん表に出る場所—毛髪

体質の違いが目に見えるかたちで出る場所として、毛髪ほど分かりやすいものはありません。

体質別の髪と頭皮

体質 頭皮 毛量 薄毛の傾向
ヴァータ 乾燥しやすく、若いうちから白髪が出やすい 冷たく、灰色がかって乾燥しやすい 中間 細くはなるが、抜けにくい
ピッタ 茶色がかった細い毛 硬く、熱をもち、赤みが出やすい 少なめ 薄毛・脱毛が出やすい
カパ 黒く太く、光沢がある 厚みがあり、やわらかい 多い 薄毛になりにくい

薄毛・脱毛は、ピッタ体質にとくに出やすい現象とされています。生まれつき髪が薄めで、生え際がはっきりしない傾向があります。

なぜピッタは髪が育ちにくいのか

ここで、体質の回で見た胚葉の話がつながります。

私たちの体は、発生のごく初期に外胚葉・中胚葉・内胚葉の3つに分かれ、それぞれが体のどの部分になるかが決まっていました。ヴァータは外胚葉、ピッタは中胚葉、カパは内胚葉が優位、という対応です。

そして、頭皮と毛包はどちらも外胚葉からつくられます。ピッタ体質は中胚葉が優位で、中胚葉は外胚葉に由来する皮膚の発達を抑えるように働きます。なかでも強く影響を受けるのが、頭皮の毛根です。

一方、カパ体質で優位になる内胚葉には、外胚葉の発達を妨げる働きがありません。同じ「中胚葉ではない」体質でも、ヴァータとカパに薄毛が出にくいのは、このためです。ピッタは生まれた時点ですでに、髪が育ちにくい構造になっている、ということです。

さらに、HoxD13という遺伝子が、爪と毛髪の形成に関わっているとされています。これを中胚葉の働きと結びつけて、毛髪の個体差を読み解こうという見方があります。体質は、発生学の知識の積み重ねによって、合理的に説明できるようになりました。

そして実際の薄毛・脱毛では、この生まれつきの素因に、頭皮と毛根の老化が追い打ちをかけることになります。

しかし、現代科学とアーユルヴェーダの智慧を融合すれば、打てる手はあります。

体質がいちばん表に出る場所—毛髪

そのほかの要因

  • 熱い頭皮—熱は毛周期を妨げます。ピッタ体質の頭皮はもともと熱をもちやすく、毛髪が育ちにくい傾向があります
  • 薄く硬い頭皮—頭皮の発達が十分でないので、毛根の形成が妨げられやすくなります
  • 男性ホルモン—仕組みとしては存在します。毛乳頭の細胞には男性ホルモン(DHT)の受容体があり、ここに結びつくと、毛髪の成長を抑える因子が出ることが知られています。ただし、この経路が薄毛につながる人はごく一部だとされています。年齢とともにDHTは増えますが、カパ体質に薄毛はほとんど見られません。薄毛の出方を分けているのは、むしろ胚葉形成による構造の違いだと考えられています
  • 細胞老化—これは体質を問わず、全員に共通します。年齢とともに頭皮が老化し、髪は白く細くなります
  • 洗う成分—シャンプーの主成分は界面活性剤で、全体の1〜2割を占めます。界面活性剤は、濃度が高ければ細胞を壊し、低い濃度でも細胞を老化させる方向に働くことが報告されています。頭皮と毛包は外胚葉からつくられた生きた組織なので、ここは無関係ではいられません
  • ただし、細胞への影響の強さは成分によって大きく違います。そして洗浄力とは別のものです。よく落ちるものほど細胞に厳しい、というわけではありません

※細胞への影響は培養した細胞に対して調べられるもので、製品を実際に使ったときの影響とは分けて考える必要があります。

視点を変えると、面白い話もあります。頭髪は帽子、体毛は防寒具にあたる、という捉え方です。実際、体毛の量には人種や気候による差があります。寒い地域ほど多く、暑い地域ほど少ない。身を守るための仕組みだと考えれば、当然の結果といえます。

毛髪を維持する方法

対策は簡単ですが、実行するには強い意志が必要になります。

  • 頭皮に熱をこもらせない。頭を使いすぎないのが効果的ですが、現実的には難しいようです
  • 頭皮をやわらかく保つ。指でのマッサージが挙げられます
  • ピッタを下げる生活を心がける。食事と行動の項で挙げたとおりです
  • 頭皮と毛根の細胞に効くハーブを取り入れる。ハーブの成分が酵素や受容体に直接はたらくことは、さきに見たとおりです
  • 洗う成分を見直す。ハーブで手を打っても、日々使う洗浄成分が頭皮の細胞に負担をかけていては、元も子もありません

10. 太りやすさも、同じ筋道で説明できる

もう一つ、体質の差が出やすいものとして太りやすさがあります。体質の回でも触れましたが、改善という視点から短くまとめておきます。

肥満は、遺伝子そのものよりも、カパ体質と生活習慣に起因すると考えられています。体の中では、栄養の過剰やストレスをセンサー受容体が感知し、節約遺伝子などが働き、ホルモンや情報伝達物質がつくられ、結果として代謝が抑えられて脂肪が蓄えられる—という順序で反応が進みます。

要因と対策は、きれいに対応しています。

太りやすくする要因 対策
過食 カロリー制限を実施する
運動不足 適度な歩行や運動を行う
ストレス過多 ストレスを減らす行動をとる
カパの上昇 カパを減少させる食事や生活スタイルを採用する

センサーや受容体の働きに個人差があるという点は、先ほど見たとおりです。同じものを同じだけ食べても差が出るのは、そのためです。

11. まとめ

アーユルヴェーダの教えは、細かく見れば見るほど合理的です。ただ、そのすべてを実行するのは不可能です。最小限、実行できるところだけを取り出すと、次の表に収まります。

体質 食事 行動
ヴァータ 多めに摂る/体を温める食物 静かな行動/軽度な運動
ピッタ 普通に摂る/代謝を抑える食物 温和な行動/適度な運動
カパ 少なめに摂る/代謝を高める食物 活発な行動/激しい運動

今回の内容を整理します。

  1. 体質を整える手段は、ハーブ・食事・行動・浄化の4つ。日々動かせるのは前の3つ
  2. 食事の「温かい・冷たい」は温度ではなく、体内の発熱反応・吸熱反応の向きを指す
  3. 行動は、自分の意志で動かせる唯一の領域。変化がいちばんはっきり表れるのは人との関わり方
  4. ハーブの有効成分は「体の基本成分+活性基」という作りで、酵素や受容体の働きに直接届く
  5. 体質の正体は、受容体をはじめとする分子レベルの個人差の積み重ね
  6. 「自然のものだから安全」ではない。毒と薬を分けているのは量。伝統的な製法の決まりは、そこを踏み外さないためにある
  7. 毛髪は体質がもっとも表に出る場所。ピッタ体質は、生まれた時点ですでに頭皮と毛包が育ちにくい

4回にわたって、アーユルヴェーダの土台にあるサーンキャ哲学から、トリドーシャ理論、体質、そして実践までを見てきました。

覚えるべきことは膨大に見えますが、原理そのものは驚くほど少ない。どの働きが強く出やすく、どこが崩れやすいのか。それを知ったうえで、反対の方向へ少し寄せてやる。アーユルヴェーダが数千年かけて積み上げてきたものを一言にすると、バランスの維持に行き着きます。

細かなリストは、必要になったときに見れば事足ります。大事なのは、自分がどちらに傾きやすいかを知っておくこと。そして、今日の食事と今日の振る舞いを、ほんの少しだけ反対側に寄せることです。

AYURMASTERは、アーユルヴェーダの伝統と現代科学の研究をつなぐことをテーマにしたブランドです。横浜市立大学での長寿研究をもとに、インド・バングラデシュのハーブを厳選し、独自の製品づくりを行っています。原料の選定では、成分が細胞に与える影響(細胞毒性)まで調べたうえで採用を決めています。

※本記事は、アーユルヴェーダの伝統的な考え方を一般向けにご紹介するものであり、特定の症状の診断・治療・効果を保証するものではありません。体調に関するお悩みは、医療機関にご相談ください。

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